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異議申立てを弁護士に依頼するメリット

2020.2.4

1 以前のブログでもご紹介した通り、異議申立てには、加害者側窓口になっている損害保険会社を通じて行う「事前認定」と、自賠責保険を引き受けている保険会社を通じて行う「被害者請求」の2通りの方法があります。
いずれの方法による場合でも、異議申立書をご自身で作成できるのであれば、異議申立て自体は弁護士を依頼しなくともご自身で行うことが形式的には可能です。
 では、異議申立てを専門の弁護士に依頼するメリットはどこにあるのでしょうか、今回のブログでは、その点をご説明いたします。

2 問題点の分析と資料の収集
 形式的にはご自身で異議申し立てができると言っても、多くの方は異議申立書にどのような内容を記載すべきなのか全くわからないと思われます。
 異議申立書には、認定内容に対する反論や認定内容とは異なる新たな事実などを記載していくことになりますが、どの点に対してどのような反論をするのか、またどのような事実が必要なのかは認定内容を綿密に検討することで初めて導き出されるものです。
 すなわち、異議申し立てを行うには、後遺障害の存在が否定された理由(もしくは、下位の等級が認定されて理由)を詳細に分析し、どのような点がネックとなっているのか、認定内容と被害者の医療記録の内容に齟齬はないかを綿密に分析する必要があります。
 このような分析を被害者の方がご自身で行うことは時間や労力がかかるだけでなく、後遺障害に関する知識や経験がなければ分析を行うこと自体が困難です。
 この点、交通事故に詳しい弁護士であれば、これまでの経験や類似事案の蓄積等から綿密に分析を行い、異議申し立てのポイントとなる問題点を洗い出すことが容易になるのです。もちろんこの段階で、異議申し立てに適さないことが判明することもありますが、その場合でも、弁護士に依頼をしているのであれば、現在の認定内容に応じた適正な賠償額を相手方に請求するための手続きにスムーズに移行することができます。

3 追加資料の収集の手助け
 上記の問題点の分析をすることができたら、その次は後遺障害の認定内容が誤っていることや上位の後遺障害等級が認定されるべきであることを裏付ける各種資料を収集や作成することが必要になります。
 異議申立ての場合、書面審査により行われるため、異議申立書や初回の後遺障害認定に添付されていた診断書等の資料だけでは不十分であり、初回の後遺障害認定時とは異なる新たな資料を提出することが重要になってきますが、多くの方は、どのような資料を追加すればよいのか、見当もつかないことが多いと思われます。
 もちろん、損害保険会社は、加害者側の窓口の保険会社であろうと自賠責保険会社であろうと被害者のために新しい資料の収集してくれることはありませんし、どのような資料が有益なのかを示唆してくれることもありません。
 そこで、被害者は自力で追加資料を収集しなければならないことになりますが、専門の弁護士に依頼すれば、弁護士から適正な後遺障害等級の獲得のためにはどのような資料が必要なのかという点に関するアドバイスを受けることが可能になります。
 例えば、当事務所が異議申し立てを行う際に「主治医の意見書」というものを異議申立の添付資料として提出することがあります。後遺障害等級の認定内容に医学的な見地から疑問がある場合に、被害者の方を実際に診察した医師に医学的な見地から意見を書面に書いてもらうものです。
 但し、この意見書も提出すればいいというわけではありませんので、やみくもに書いてもらっても意味はありませんし、場合によっては被害者の方にとってマイナスな情報が記載されてしまう可能性もあります。それは、医師は医学の専門家ではありますが、「後遺障害認定」の専門家ではないので、異議申し立てに必要となる情報の取捨選択をすることが困難だからです。
 そこで、専門の弁護士が、主治医に質問を行ったり、場合によっては面談を行ったりして、意見書に必要な情報を収集し、最終的に作成をお願いしたい意見書の内容を医師に依頼することができるのです。
 例えば、腱板断裂が生じているときに、診断書には「外傷性腱板損傷」とだけ記載されており、後遺障害等級認定では「事故との因果関係が不明」との理由で後遺障害が否定される例が多くみられます。
 そこで、どのような所見から腱板損傷が「外傷性」であると判断したのか、事故によって生じたものであると言えるのかなどの点について、医師に対し質問を行い、意見書の形でまとめてもらったものを異議申し立ての資料として添付することとなるのです。
 このような、医師とのやり取り等を被害者の方が個人で行うとなると膨大な労力を必要とすることなると思いますし、場合によってはマイナスな情報が記載された意見書ができてしまう可能性さえあります。

4 その他
 さらに、異議申立は申立を行えば終了ではなく、結果が出るまでの間に、審査機関から申立書の内容に関する質問や追加の資料の提出を求められることがあります。
 お仕事をされている方などは、この審査機関とのやり取りだけでもかなりの負担となることが考えられます。
 このような場合にも、専門の弁護士を依頼すれば、弁護士が審査機関との対応を引き受けてくれることになり、このような負担を減らすことができるのです。

5 最初に述べた通り、異議申立ては被害者の方がご自分で行うことも形式的には可能ですが、上記の通り相当な手間や労力がかかる上、ポイントを押さえない異議申し立てを行った結果、再度適正な後遺障害等級が認定されないことも少なくありません。
 このような遠回りを避けるためには、異議申し立てを行いたいと思ったら、まずは交通事故に詳しい専門の弁護士に相談してみることをお勧めいたします。