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後遺障害等級への不服申立の方法②

2019.5.19

 前回のブログでは異議申立てについて記載しましたが、今回はその他の不服申立ての手段について記載します。

(2)自賠責保険・共済紛争処理機構への申立て
 自賠責損害調査事務所の認定結果に不服がある場合には、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(以下、「紛争処理機構」といいます。)の調停(紛争処理)も利用することができます。
 初回の後遺障害認定に不満がある場合でも、紛争処理機構の調停(紛争処理)を利用することが出来ますが、一般的には異議申立てをしても認定結果が変わらなかった場合に利用する場合が多いです。

 紛争処理機構では「公正中立で専門的な知見を有する第三者である弁護士、医師及び学識経験者で構成する紛争処理委員会が、保険金の支払内容の妥当性について審査する」とされていますので、自賠責損害調査事務所の認定とは全く別のメンバーが審査することになります。

 紛争処理構の調停(紛争処理)の最大のメリットは、紛争処理委員会によって出された調停結果を保険会社や共済組合は遵守しなければならないとされていることです。
 例えば、自賠責損害調査事務所による後遺障害の認定で非該当とされたケースにおいて、紛争処理委員会から14級9号に該当するという調停結果が出された場合には、保険会社や共済組合は14級9号を前提として示談をしなければならないことになります。
 他方で被害者側には遵守義務はありませんので、非該当という調停結果が出たとしても訴訟提起をして争うことは可能です。

 紛争処理機構の調停(紛争処理)は「調停」という名前が付けられていますが、裁判所の調停などと異なり、双方の当事者や代理人などが出頭して互いに譲歩できるかどうかを話し合うことはありません。
 初回の後遺障害の認定や異議申立てと同様に書面審査ですので、紛争処理委員会が被害者や代理人から直接話を聞くことはありませんし、被害者や代理人が出頭する必要もありません。そして、審査が終了すると調停結果が送付されるという形で調停は終了します。
 従って、異議申立てと同様にいかに説得的な書面を提出できるかが極めて重要になってきます。
 但し、紛争処理制度の申請に当たって新たな資料(診断書や画像等)を提出することはできません。紛争処理機構の調停(紛争処理)は、あくまで自賠責保険・共済の判断の適否を検討するものですので、調停の段階で新たな資料(診断書が画像等)を提出しても、自賠責保険・共済の判断がされていないという事になるからです。

 紛争処理機構の調停(紛争処理)は異議申立てとは異なり複数回の申立てをすることは出来ませんので、調停結果に不服がある場合にはそれを前提として示談をするか、訴訟提起をするしかありません。
 そして、異議申立てと同様に紛争処理機構への調停(紛争処理)の申立をしても時効は中断しませんので、事故日から相当日数が経過している場合には時効に注意が必要です。

(3)訴訟提起
 異議申立てや紛争処理機構による調停(紛争処理)によっても認定された後遺障害の等級に変更がされなかった場合には、訴訟提起をするほかありません。
 後遺障害の等級認定は一次的には自賠責損害調査事務所によって行うことになっていますので、自賠責損害調査事務所が認定した等級とは異なる等級を裁判所が認定しうるのかという疑問が生じますが、裁判所は自賠責損害調査事務所の認定に拘束されないとされていますので、自由な心証の下で等級を認定することができます。

 実際の訴訟においても後遺障害の等級が争点になることも少なくなく、裁判所が自賠責損害調査事務所が認定した等級とは異なる等級を認定したケースも多くあります。
 当事務所が実際に受任したケースでも以下のようなケースがありました。
 交通事故によって肩を強打してしまい、主治医の先生からはMRIの画像上で肩の腱板損傷が確認できるとの診断を受けたため、リハビリなどを行っていました。
 そして、症状固定になったことから後遺障害の申請をしたところ、「本件事故による骨折・脱臼・腱板断裂等の明らかな外傷性の異常所見は認められない」として「後遺障害非該当」という認定結果でした。
 そこで、当事務所が受任後、主治医ではない医師に画像を改めて検討してもらった結果、やはり腱板が部分断裂しているとの診断でした。
 複数の医師が「腱板が損傷している」との診断をしているにも関わらず、非該当という認定結果で示談することはできませんでしたので、訴訟提起をすることにしました。
 訴訟においては、詳細かつ丁寧に肩の腱板が損傷していることの主張及び立証を行った結果、裁判所も肩の腱板が損傷しているとの心証となり、12級を前提とした内容で訴訟上の和解をすることができました。

 このように訴訟において認定結果が変更される可能性がありますので、異議申立てや紛争処理機構の調停で認定結果が変わらないからと言って諦めるのは早いかもしれません。
異議申立ての結果や紛争処理機構の調停結果に不服がある場合にも一度当事務所へご相談下さい。