ブログ

適正な後遺障害の等級が認定されない理由

2019.4.1

 後遺障害を認定する機関である自賠責損害調査事務所が公表しているデータによれば、年間約700件ものケースで異議申立てに基づく後遺障害等級の変更がされています。

 このデータによれば毎年少なくとも700人の方が本来認定されるべき適正な後遺障害等級が認定されていなかったことになりますが、これはあくまで異議申立てをした方のデータに過ぎません。
 異議申立てをせずに諦めて示談してしまった方も相当数いらっしゃると思いますので、1回目の後遺障害認定において適正な後遺障害等級が認定されていないケースは潜在的には相当数あると思われます。

 では、適正ではない後遺障害の等級(又は後遺障害非該当という結果)がなぜ認定されてしまうのでしょうか。

 一つ目の理由としては、自賠責損害調査事務所が何らかの間違い(ミス)をする可能性があるからです。

 まず、自賠責損害調査事務所による後遺障害の認定作業は機械が行っているわけではなく、人が判断をしています。
そして、言うまでもありませんが、人が判断している以上、一定の確率で間違い(ミス)が起こることは避けようがありません。
 例えばMRIやX線などの画像については、自賠責損害事務所から依頼を受けた医師が読影していますが、大量の画像を読影する中ではどうしても見落としや見間違いが出てきてしまいます。
 そのため、異議申立てがされたケースでは審査会にかけて慎重に再度審査するという決まりになっていて、初回の認定時とは異なるメンバーで審査しますので、当然の事ながら画像の読影も別の医師が改めて行うことになります。

 ここで、実際にあったケースをご紹介しますと、事故によって肋骨を骨折し、変形癒合してしまったことから胸部に疼痛が残存した方がいらっしゃいました。
 そこで事前認定で後遺障害の申請をしたところ、「提出の画像上、骨折部の骨癒合は得られ変形も認められない」として、14級9号しか認定されませんでした。
 しかしながら、主治医の診断では変形癒合しているとの事でしたので、自賠責損害調査事務所の認定には到底納得が出来ませんでした。
 そのため、主治医に協力を得て新たな資料を作成した上で、当事務所が作成した詳細な異議申立書を提出したところ、「提出の画像上、肋骨の変形癒合が認められ、裸体になったとき、変形が明らかにわかる程度のものと捉えられます。」とされ、「ろく骨の著しい変形を残すもの」として12級5号が認定されました。
画像については追加で提出していませんので、同じ画像でありながら、初回の認定では「提出の画像上、骨折部の骨癒合は得られ変形も認められない」とされたものが、異議申立では、「提出の画像上、肋骨の変形癒合が認められ(る)」となり、180度違う認定結果となっているのです。

 このように一見すると客観的な資料であるMRIやX線などの画像であっても判断する人によって診断が変わることも十分に有り得るのです。
 人が判断している以上間違い(ミス)は一定の確率で生じますので、自賠責損害調査事務所の認定結果にも誤りはあります。
 認定結果に不満がある場合や良く分からない部分がある場合には、そのまま諦めてしまうのではなく、異議申立てによる後遺障害等級の変更の可否について一度検討すべきだと思います。

 本来認定されるべき適正な後遺障害の等級が認定されない二つ目の理由は、提出した資料では認定に必要な資料が不足している場合です。

 例えば、12級の後遺障害が認定されるために「10ヶ月以上通院をしたこと」という要件(要件A)と「神経学的な所見が認められること」という要件(要件B)の二つの要件が必要だとします(注:実際の要件ではなくあくまで例示です)。
 ところが、提出した後遺障害診断書には通院期間として10ヶ月以上の期間が記載されているものの、神経学的な所見に関する記載がない場合には、「10ヶ月以上病院で通院したこと」という要件Aは満たすことになりますが、「神経学的な所見が認められること」という要件Bを証明できていませんので、当然の事ながら12級の後遺障害が認定されることはありません。

 このような場合に自賠責損害調査事務所が「後遺障害診断書には神経学的な所見が記載されていません。もし、神経学的な所見があるのであれば追加で資料を提出して下さい」というようなアドバイスや指示をしてくれるのであれば、資料が不足して適正な等級が認定されないということはほぼ無くなるかもしれません。
 しかしながら、自賠責損害調査事務所はあくまで提出された資料によってのみ判断するというスタンスですので、自賠責損害調査事務所が資料を要求することはなく、「神経学的な所見が認められること」という要件を証明できる資料が提出されていない場合には、12級は認定されません。
 後遺障害の認定に必要な資料が提出されていないことや後遺障害診断書の記載内容が不十分であることなどを理由として適正な後遺障害の等級が認定されないのはとても勿体ないことです。
他方で、どのような資料や記載が必要なのかは怪我の内容などによって人それぞれ異なることになりますので、交通事故に詳しい弁護士に相談して資料を準備していくのがいいと思います。